ダイブ終了後、タンクからレギュレーターを外したとき、ダストキャップをタンクのエアーで「シューッ」っとやってる方なら、ぜひ見てくださいね。
じつは、あのシューッとやること、器材にもタンクにも、そして環境にも悪影響を及ぼすことになるので、要注意なんです!
実際ダイバーに訊いてみた
【エアで吹いてる方】
「講習の時にインストラクターに習った」
「そうしないと器材が壊れるんじゃ?」
「知らなかったけど皆がやってて真似してる」
「なんだかカッコいい?」
【エアを使わない方】
「講習の時にインストラクターに習った」
「口でフッと吹くかタオルで」
「うるさくてイヤ」
「えっエアで吹くの?知らなかった」
たいていのダイバーからは以上のような意見をよく聞きます。
そこからわかるのは、
教えられたことを忠実に実行している
というダイバーもいますが、
よくわかってない、なんとなくやってる
というダイバーが大半なのが実際なところ。
エアで吹く習慣、始まりはダイビングバブル期?
映画「彼女が水着に着替えたら」は、50代以上のダイバーならご存じかも。
ちょうどそのころ(1980年代後半)世の中でダイビングが大流行し、東京の私鉄の各駅にはダイビングショップができ、渋谷の街中とかにはSASの蛍光カラーのBAGやウィンドブレーカーが溢れたりもしました。懐かしいですねー
私の記憶だとそのころ、ダイビング器材としては「スキューバプロ」が、そのステイタス性や性能また堅牢な造りから、インストラクターやショップのレンタルとしてとても多く使用されていました。(BCのことをいまだにスタビと呼ぶ方ならご存じですね)
そしてそのスキューバプロ社のレギュレーターは、ダストキャップの造りが他のメーカーと違っていて、内側に大きな空洞があるんです。なぜだか現行モデルでも。
この中に残った水滴がなかなか除去できなくて、「タンクのエアで吹き飛ばす」というやり方が流行り、その後インストラクターによりそのやり方が伝えられていったというのが経緯となります。
スキューバプロのダストキャップはコレ↓
ちなみにアクアラングやTUSAなど他主要メーカーのほとんどは隙間のない形状で、
Apeks社は球状のダストキャップを採用してます。
たしかその昔、カップ麺のテレビCMで、ダイバーが濡れた髪をタンクのエアで吹き飛ばすシーンがあったのも、そういった影響があったのでしょうね。
専門家の立場で言わせていただきます
マレスやアクアラング・APEKS社など正規の修理資格を持ち、30年の修理実績と1万本以上の潜水経験のある私の意見としては、
ダストキャップをタンクのエアで吹く行為は、
あまり意味を持たないやり方です。
しかも、バルブの構造や意味を知らないと器材を傷めてしまうこともあるのと、
さらに、周りに迷惑かけるばかりか環境に悪影響を及ぼすことがあるんです!
実際に1年間実験してみた・・・その結果は
以前に、オーバーホールでお客様から預かるレギュレーターのなかで、内部がとても腐食しているものがあることが気になっていた私は、お客さんダイバーの器材の扱いをチェックしていたところ、タンクのエアを使っている方が多いことに気が付きました。
そこで私は、自分で使うレギュレーターを3台用意し、それぞれ以下のやり方をして、1年間使ってどうなるかを実際に試してみました。
- エアで吹く
- 息で軽く吹く
- 何もしない
ちょうど1台につき100~150ダイブの使用となりましたが、
その結果、分解して確認した内部にどれも大きな差はありませんでした!
ダストキャップだけ吹いてるつもりでも・・・
タンクバルブを開けると、バルブからは斜め上に向かって放射状にエアが噴出します。
しかもエアが「ブシューーーッ」っと噴き出すほど大きくバルブを開けると、エアの勢いと流量はとても多くなり、ダストキャップだけを吹いてるつもりでも、レギュレーターのフィルター部分にもエアが当たり、水滴を内部へ吹き入れてしまってるケースをよく目にします。
なかには、レギュレーターのフィルターに向かってエアを吹く方も!これは全くNGです。エアを斜めに当てれば大丈夫と言う方もいますが、わたしも実際にいろいろ検証しましたが、残念ながら必ず中に水滴が入ってしまうんですよ。
オーバーホールで中を開けたときよく見る、フィルタ内部へ広がる緑青などの腐食はたいていこれらが原因となります。
フィルターのすぐ下に高圧ポペットやチャンバーがあるタイプのレギュは特に要注意(※専門的ですみません。わからなかったらご連絡ください!)
また、バルブを大きく開けることはバルブ内の空気の流れを急速に早くし、バルブの結露やタンク内の急な減圧を引き起こすこととなり、寒冷地などではバルブが一瞬で凍り付いてフローしっ放しになる原因として、タブーとされている行為です。
ダイバーとして視野を広くすることは大事
よく行っていた伊豆のとあるダイビングスポットで、
知り合いの漁師が「ダイバー来てくれるの嬉しいんだけど、漁のある日はあの音で寝れなくて・・・」と言っていたのよく覚えてます。
例えば車いじりが好きで、週末に仲間と集まって皆でエンジンをふかしあったりしたら、それを嫌がる人はきっといますよね?
まぁダイビングするときは、ダストキャップの件だけではありませんが、周りをよく見て状況を観察できるような広い視野をもつことは大事かと思います。
また、ウミガメの産卵地や希少な鳥の繁殖地となってるとある小さな南の島では、大きな衝撃音が繰り返されると、生物の生態にも影響を及ぼすことにもなるんです。
自然が大好きなダイバーであるなら、現地の人の協力で解放された素晴らしい自然を観察できる場所を、ダイバー自ら破壊してしまうことだけは避けたいものです。
そういった大きなことまで理解していただけることが、自分たちダイビングインストラクターの大きな役割だと思っています。
海外では恥をかくことも
以前に、とある有名な海外のダイビングスポットで、数名の日本人ダイバーが一斉に「シューッ」とやったところ、まわりのダイバー皆その様子に驚き、ギョッとした眼差しでドン引き!すかさず現地マネージャーが飛んできて、丁寧にそのグループにその行為をやめるよう説得していました。
国際的にみると、タンクのエアで水滴を飛ばすのは日本人だけです。
ただ、最近は日本人オーナーの海外現地ダイブショップや一部海外のダイブサービスでは、そのスタッフも含めエアでシューっとやるところがあるのも事実。
クラスター的に広まってしまわないこと祈るばかりです・・・
実践してもらいたいオススメのやりかたは
「必ずエアで吹いてください!」というイントラも、さすがに減ってはきましたがまだ存在しますし、それにポリシーがちゃんとあるのでしょうから、私はそれを全く否定はしません。
私としては以下のやり方が、スマートで確実で迷惑もかけないのでオススメです。
- できればタオルなどでキャップと1st側を拭いてあげる
- または口からフッ!っと息で飛ばす(コロナ観点から自己器材のみ)
- ダストキャップを再びしっかりと取付けて指差し確認する
まぁいろいろとエラそうに語ってしまいましたが、ぶっちゃけ言うと、エアで飛ばそうがどうしようが、それによるレギュレーターへの影響は大きいものではなく、またいきなり壊れてしまうことでもありません。ただ、自分も含めダイバーとしては、いまよりも視野を広げたり、環境のことをもう一歩意識することができればいいな~ということを、このエアのネタにて伝えたかったのです!アフターコロナのダイビングライフ、あらためて楽しんでいきましょうね^^